
それから、六本木には不思議な、というか独特のムードがあるんですよ。例えばムッシュ(かまやつひろし氏)との出会いは、'80年にジョン・レノンが亡くなった次の日、六本木のレストランのトイレに入ったら偶然彼がいて、そのときはまだ会釈する程度の顔見知りだったのに、僕からいきなり挨拶も主語も無しに「いやな世の中ですね」と話しかけたの。そしたら「いやですねぇ」と。トイレで並びながらの自己紹介。それがきっかけだったんです。某大物女性演歌歌手の方とも、天ぷらの『魚新』でお会いしたときに、酔った勢いで「歌いに行きましょう!」って、誘っちゃった(笑)。歌ってもらったのも感激だけど、僕の番のときには後ろからコーラスをかぶせて下さったの。最高でしょ? こんなふうに「六本木」という分母の上に乗っかっただけで、お互いに許せるというか、それだけで親しくなれるムードがあるんです。何度も同じお店に通っているうちに、いつの間にかお互いに会釈しあって、ちょっと一杯やる?_となっていく。つまり良い意味での不良性がお互いに確認できちゃったら、もう仁義切らなくて済んじゃうみたいなね。お互いの心の内を探りあう、まさに“ジャズ”のような雰囲気があったんですよ。今は残念ながら少し薄れてしまったのかもしれないですけどね。